窒化処理とは?種類からメリット、デメリットまで解説!
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2025/09/2

窒化処理は、表面硬化熱処理の一種で、部品の耐久性を向上させる目的で広く利用されています。
今回は、窒化処理について、種類からメリット、デメリットまで解説いたします!
窒化処理とは?
窒化処理は、金属部品の表面硬度を上げ、耐摩耗性、耐蝕性、抗溶性など表面特性を向上させるための表面改質技術の一種です。
主に工具鋼、工作機械部品、自動車部、医療器具、建設資材など、幅広い業界で用いられています。
窒化処理の種類
窒化処理は、その手法や目的によって様々な種類があります。窒化処理は、大きく、「窒化」「軟窒化」「酸窒化」「浸硫窒化」の4つに分かれます。さらに、「窒化」は「ガス窒化」と「プラズマ窒化」に、「軟窒化」は「ガス軟窒化」、「塩浴軟窒化」へ、「浸硫窒化」は「塩浴浸硫窒化」、「ガス浸硫窒化」へ分けられます。
下記では、それぞれの特徴をご紹介します。
種類 | 処理方法 | 特性 | |
窒化 | ガス窒化 | アンモニアガス中で長時間加熱し、窒素(N)だけを浸透させ、硬化します。 | 高い硬度、優れた耐摩耗性。 |
プラズマ窒化 | 真空容器内でプラズマを発生させ、イオン化した窒素を金属部品の表面に浸透させることで、表面を硬化します。 | 低温処理のため、歪みや寸法変化が少なく、複雑な形状のでも対応可能。 | |
軟窒化 | ガス軟窒化 | 炉内を雰囲気ガスとアンモニアで満たし、窒素と炭素を浸透させ、製品表面に高硬度の化合物層を生成します。 | 表面に酸化膜が形成しにくく外観が綺麗に仕上がり、汎用性が高い。 |
塩浴軟窒化 | シアン化合物を含む、塩浴に浸し、窒素と炭素を浸透させ、硬化します。 | 処理時間が最も短い。優れた耐疲労性。 | |
酸窒化 | ガス酸窒化 | アンモニアガスに酸化性ガスを合わせた雰囲気ガスを用いて処理を行います。 | 窒化速度が早く、酸化膜による耐焼付性。 |
浸硫窒化 | 塩浴浸硫窒化 | 塩浴に浸し、窒素と炭素、硫黄を同時に浸透させ、表面を硬化します。 | 抜群の耐焼付き性と摺動性。 |
ガス浸硫窒化 | ガス中で金属部品の表面に窒素と炭素、硫黄を同時に浸透させ、表面を硬化します。 | 耐焼付き性に優れ、環境に優しい。 |
窒化処理によって材料の表面が硬化されるため、その表面の耐摩耗性や耐蝕性が向上し、優れた摩擦特性を発揮するようになります。窒化処理の結果、金属の表面には窒化物層が形成され、強度や寸法安定性が向上します。
窒化処理は、金属部品の寿命を延ばすために欠かせない技術であり、多くの製造業界で採用されています。また、金属材料の強度向上などの技術的な要件から、窒化処理は、医療機器、航空機、自動車、モータースポーツなど、幅広い業界で使用されています。
窒化処理のメリット
1. 高い表面硬度と耐摩耗性
窒化処理によって形成される硬化層は非常に硬く、部品の耐摩耗性を飛躍的に向上させます。ガス軟窒化の場合は、特に摺動性に優れる表面層を形成します。
2. 寸法精度の高さ
前述の通り、窒化処理は鋼の変態点以下の低温で行われるため、熱による変形や寸法変化が非常に少ない点が大きなメリットです。焼き入れ・焼き戻しを必要としない場合が多く、精密な寸法精度が求められる部品に最適です。
3. 耐食性の向上
窒化層は、一般的に窒素と鉄の化合物であるため、耐食性も向上させます。特に、ガス軟窒化や塩浴窒化では、表面に形成される化合物層が優れた防錆効果を発揮します。
窒化処理のデメリット
1. 再加工の困難さ
形成された窒化層は非常に硬く、処理後の寸法調整や再加工が困難な場合が難しくなります。
2. 硬化層の薄さ
窒化処理で得られる硬化層は、一般的に0.1mm~1.0mm程度と比較的薄いです。大きな圧力がかかる場合や、深くまで硬化させたい場合には不向きな場合があります。
3. 材料の限定性
窒化処理に適しているのは、窒化物を形成しやすい合金元素(Al、Cr、Mo、Vなど)を含む鋼種です。これらの元素を含まない炭素鋼などでは、十分な硬化層が得られないことがあります。ただし、ガス軟窒化は比較的幅広い鋼材に適用可能です。
窒化処理の事例
「熱処理技術ナビ」による窒化処理の事例をご紹介します。
バネの浸硫窒化

こちらは自動車のオートマチックトランスミッション内で使われているワッシャーへの処理事例となります。 ワッシャーは球面の形状でありバネ構造を有し、常に隙間をゼロにする機能を果たしておりますが、接触面には負荷が掛かりますので窒化処理をされるケースが多いです。部位によっては負荷が掛かった際に強度だけで耐えるよりも、滑りの動きで応力を逃がす機能が有効になる場合もございます。「ガス浸硫窒化処理(マルチナイト処理)」は、部品表面に硫化鉄系の固体潤滑膜を形成させることができる窒化であるため、この様なケースにおいても有効に使われている事例となります。
産業用ポンプ部品の窒化処理

こちらは産業用ポンプ部品の窒化処理の事例になります。
各製造業のプラントには様々な用途で流体(液体)を搬送するポンプが使われております。
冷却用の工業用水を搬送するユーティリティー用途の他にも搬送流体自体が商品というケースもあり、
例えばウーロン茶や日本茶を搬送するポンプには茶葉が一緒に流れたり、化学系材料を搬送するポンプでは高分子ポリマーが水と一緒に流れているような状況があります。
茶葉や高分子ポリマーは金属と比べた際に硬いものではありませんが、流体中に混じって搬送された場合、ポンプ部品を摩耗させる原因になる場合があるります。24時間稼働を要するラインは止めることが難しく、且つ作業コストも高額となる為にメンテナンス頻度を長く出来ることでリスク低減とコスト削減が図れます。
この様なケースに対して設備メンテナンスメーカーと組んで、修繕頻度が多いポンプケーシングやインペラーに対して窒化処理や窒化+超硬コーティングを実施することでメンテナンス頻度を延長することが出来てコスト削減に繋がった事例がございます。
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