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熱処理の基礎知識・技術コラム

浸炭焼入れの原理と種類——ガス浸炭・真空浸炭・ダイレクト浸炭を徹底比較

  • 浸炭処理

2026/08/9

「脱炭素対応を求められているが、製品スペックは変えられない」「夜間の無人稼働をしたいが、可燃ガスを使う炉では踏み切れない」「ノズルや細孔の内部だけ浸炭層が薄くなってしまう」——浸炭焼入れを現場で運用している方なら、こうした悩みのひとつは必ず身に覚えがあるのではないでしょうか。

本コラムでは、浸炭焼入れの原理・工程・種類を体系的に整理したうえで、従来のガス浸炭が抱える構造的な限界と、それを根本から解決する次世代技術(常圧スマート浸炭・ダイレクト浸炭)について、株式会社日本テクノの視点からお伝えします。設備更新や外注先の見直しを検討している技術・設備担当の方のご参考になれば幸いです。

浸炭焼入れとは?

【定義】 浸炭焼入れとは、低炭素鋼の表面に炭素を浸透(拡散)させたあと焼入れを行い、表面を硬化させる熱処理方法のことです。

「鋼を硬くしたければ炭素量を増やせばよい」というのは、金属加工の基本原則のひとつです。しかし炭素量が多い鋼は切削・鍛造などの加工がしにくく、コストも上がります。そこで、加工性のよい低炭素鋼(炭素量0.1〜0.3%程度)を使い、形状を仕上げたあとで表面層だけに炭素を浸透させる——これが浸炭焼入れの発想の根本です。

処理後の部品は、表面は工具鋼に近い高硬度(HV700〜800程度)を持ちながら、内部は低炭素状態のまま靭性を保ちます。耐摩耗性と耐衝撃性を同時に成立させられる点が、歯車・カムシャフト・軸受などの駆動部品に広く採用されてきた理由です。

浸炭焼入れが選ばれる理由——表面硬化処理の中での位置づけ

表面硬化処理には浸炭焼入れのほか、窒化処理や高周波焼入れがあります。それぞれ特性が異なるため、部品の用途・形状・求められる品質によって使い分けが必要です。

比較軸浸炭焼入れ窒化処理高周波焼入れ
硬化層の深さ0.2〜2.0mm0.1〜0.5mm1〜5mm
表面硬度HV700〜800HV900〜1200HV550〜700
処理温度900〜950℃500〜580℃局所加熱
変形(歪み)中程度少ない比較的少ない
適した材質低炭素鋼・肌焼き鋼合金鋼中・高炭素鋼
主な用途歯車・シャフト・軸受精密部品・ねじ大型軸・クランク

なお、どの処理が最適かは部品の材質・形状・要求公差によって変わります。「浸炭焼入れが一般的だから」という理由だけで選定することは、必ずしも最適解ではありません。当社では、まず部品の仕様をヒアリングしたうえで処理方法をご提案しています。

>> 表面硬化処理の種類と比較——窒化・高周波焼入れとの違い

>> 浸炭窒化焼入れとは?浸炭との違いと選定ポイント

浸炭焼入れの工程

浸炭焼入れは主に4つの工程で構成されます。

1.浸炭:鋼材を炭素源(浸炭性ガスまたはアセチレン等)と共に加熱し、表面に炭素を浸透させます。処理温度は一般に900〜950℃です。

2.焼入れ:浸炭後の鋼材を高温から急冷し、表面の浸炭層をマルテンサイト組織に変態させて硬化させます。

3.洗浄:油焼入れを行った場合は、焼戻し前に付着油を洗浄します。

4.焼戻し:焼入れ後の脆性を和らげるため、低温(150〜200℃程度)で再加熱します。硬さを維持しながら靭性を回復させます。

浸炭の原理①——炭素が鋼の中に入る仕組み

「なぜ炭素は鋼の表面だけに浸透し、内部には均一に広がらないのか?」この問いへの答えが、浸炭処理の設計すべての出発点になります。

オーステナイト変態とは何か

鋼(鉄と炭素の合金)は温度によって結晶構造が変化します。常温では体心立方格子(BCC構造、フェライト)という比較的密な配列をしていますが、約727℃以上に加熱すると面心立方格子(FCC構造)の「オーステナイト(γ鉄)」に変態します。

オーステナイトの格子は、フェライトに比べて格子間の隙間が大きく、炭素原子(原子半径が小さい)が入り込みやすい構造になっています。この「隙間の大きさ」こそが、浸炭を900〜950℃という高温で行う理由です。常温ではどれだけ炭素源を当てても、鋼の中に炭素は入っていきません。

炭素の拡散——表面から内部へ濃度勾配で広がる理由

加熱によってオーステナイトに変態した鋼の表面が炭素性ガスと接触すると、表面の炭素濃度が高まります。このとき、表面(高濃度)から内部(低濃度)に向かって炭素が拡散していきます。これは「フィックの拡散則」と呼ばれる現象で、濃度差があるところでは物質が濃い側から薄い側へ移動する性質によるものです。

重要なのは、浸炭時間・処理温度・カーボンポテンシャル(炉内炭素濃度)の3つの変数が、炭素の拡散深さ(浸炭深さ)を決定するという点です。一般的な浸炭深さは0.2〜2.0mmの範囲で、時間を長くすれば深くなりますが、後述するように処理時間は深さの平方根に比例するため、深い浸炭層を得るには相応のコストと時間がかかります。

浸炭に適した鋼種の条件

浸炭焼入れは「炭素を表面から足す」処理のため、もともとの炭素量が少ない低炭素鋼(炭素量0.1〜0.3%程度)が主な対象です。代表的な鋼種を以下に示します。

鋼種特徴主な用途
S15C・S20C一般的な機械構造用炭素鋼。安価で入手しやすい小型部品・ブッシュ類
SCM415・SCM420クロムモリブデン鋼。焼入れ性が高く、深い硬化層を得やすい歯車・シャフト・カム
SNCM220ニッケルクロムモリブデン鋼。靭性と強度に優れる高負荷の駆動部品

なお、高炭素鋼(SUJ2など)や一般的なステンレス鋼(SUS304等)への浸炭は通常のガス浸炭では困難とされてきました。ただし当社のダイレクト浸炭技術では、SUS304・SUS316・SCH22等のステンレス・耐熱鋳鋼への浸炭実績があります。すべての材質に対応できるわけではありませんが、難材への対応については個別にご相談ください。

>> 浸炭に適した鋼種一覧——SCM415・S15C・S20Cの使い分け

浸炭の原理②——焼入れで表面が硬くなる仕組み

浸炭は「炭素を表面に蓄える準備」です。蓄えた炭素を利用して実際に硬化させるのが、焼入れというプロセスです。この2段階の仕組みを理解することが、処理条件を適切に設定するうえで欠かせません。

焼入れとマルテンサイト変態——炭素が「閉じ込められる」瞬間

浸炭後、鋼材を高温のオーステナイト状態から急速に冷却(焼入れ)すると、炭素がゆっくり移動する時間がなくなります。その結果、炭素を格子間に「閉じ込めた」まま硬いマルテンサイト組織に変態します。

マルテンサイトは体積が大きく、歪んだ格子構造を持つため、変形しにくい=硬い組織です。浸炭層(炭素量の多い表面)は急冷によって高炭素マルテンサイトとなり、HV700〜800の高硬度を示します。一方、内部は炭素量が低いまま急冷されるため、低炭素マルテンサイト(または靭性の高いフェライト+パーライト混合組織)が形成され、靭性を保ちます。

硬度分布——表面と内部でなぜ硬さが違うのか

浸炭焼入れ後の部品を断面方向に硬度測定すると、表面から内部に向かってなだらかに硬度が低下する「硬度分布曲線」が得られます。この勾配こそが、浸炭焼入れの設計上の核心です。

有効硬化層深さは「HV513(HRC50)以上の硬度が維持される深さ」として定義されることが多く、この値を部品の要求仕様に合わせて設計します。歯車のピッチ点では通常0.5〜1.5mm、軸受軌道面では0.8〜2.0mm程度が目安とされています。ただし最適値は部品の負荷条件・材質・熱処理炉の特性によって異なるため、事前のサンプル実証が重要です。

焼戻しの役割——脆さを取りながら硬さを保つ

焼入れ直後のマルテンサイトは非常に硬い一方、衝撃に対して割れやすい(脆い)という欠点を持ちます。そこで150〜200℃程度の低温で再加熱する「焼戻し」を行い、過剰な内部応力を緩和します。

焼戻し温度が高いほど硬さは下がりますが靭性は向上します。浸炭焼入れでは、表面硬度をあまり下げたくないため、低温焼戻し(150〜180℃)が一般的です。なお、光輝焼戻しでは酸化を防ぎながら処理するため、外観品質が要求される部品(後工程で仕上げ加工が不要な部品等)に有効です。

>> 焼入れ・焼戻しとは?基礎から工程管理まで解説

>> 有効硬化層深さの測定方法と管理基準

浸炭の原理③——品質を決める3つの管理変数

【ポイント】 浸炭品質を安定させるためには、処理温度・処理時間・カーボンポテンシャル(CP)の3変数を適切に管理することが重要です。

処理温度——900〜950℃という範囲の意味

浸炭処理は一般的に900〜950℃の温度帯で行われます。この範囲には明確な理由があります。

温度が低すぎると(727℃以下)、鋼がオーステナイトに変態せず炭素が入らなくなります。逆に高すぎると(1000℃超)、鋼の結晶粒が粗大化し、焼入れ後の強度・靭性が低下します。また炉材や部品へのダメージも大きくなります。なお真空浸炭では950〜1000℃の高温処理も可能で、処理時間の短縮に有利です。

炉内の温度均一性も重要な管理項目です。温度ムラがあると部位によって浸炭深さがばらつき、品質の安定が損なわれます。当社の炉設計では、炉内雰囲気の撹拌機構により温度均一性の確保を優先しています。

処理時間——浸炭深さは時間の平方根に比例する

浸炭深さ(有効硬化層深さ)は、処理時間の平方根に比例して増加します。たとえば有効硬化層0.5mmを得るのに1時間かかる条件なら、1.0mmを得るには約4時間が必要になります。

つまり「深い浸炭層を短時間で得る」ことは、従来のガス浸炭では構造的に困難です。これが、ダイレクト浸炭の処理時間短縮(ガス浸炭比約1/2)が大きな意義を持つ理由のひとつです。アセチレンガスのパルス供給により炭素供給効率を高め、拡散速度を最大化することで、同じ浸炭深さを短時間で達成します。

カーボンポテンシャル(CP)——炭素濃度の精密制御

カーボンポテンシャル(CP)とは、炉内雰囲気の炭素量(質量%)を表す指標で、鋼の表面に付与する炭素濃度の目標値として管理されます。

CPが高すぎると、鋼表面に過剰な炭素が供給され、セメンタイト(炭化物)の析出や煤(すす)の付着が起こります。これが表面脆化や炉汚染の原因になります。CPが低すぎると、目標の炭素濃度に到達できません。一般的なガス浸炭では変成ガスとエンリッチガスの混合比によってCPを調整しますが、炉内の雰囲気が酸化性であるため、鋼表面に粒界酸化(後述)が起きやすいという欠点があります。

当社の常圧スマート浸炭では赤外線レーザー分析計を用いてCP値をリアルタイム制御しています。また、ダイレクト浸炭ではアセチレンのパルス供給量で直接炭素量を管理するため、CP制御の精度が従来炉と比べて大幅に向上しています。

>> カーボンポテンシャル(CP)制御とは?浸炭品質を左右する管理指標

>> 浸炭処理の温度・時間・深さの設計計算

浸炭焼入れの種類と特徴

浸炭処理の方式は大きく5種類に分類できます。現在の工業的な主流はガス浸炭ですが、品質・環境・安全性の要求水準が高まる中で、真空浸炭・ダイレクト浸炭への移行が加速しています。

ガス浸炭——現在の主流と、その構造的な限界

プロパン・ブタン・メタノール等を原料とする変成ガス(RXガス)を用いて浸炭する方法で、現在もっとも広く使われています。設備コストが比較的低く、対応できる炉メーカーも多いため、量産ラインへの導入実績は豊富です。

一方で、以下の構造的な課題があります。第一に、RXガスには水素・一酸化炭素・二酸化炭素・水蒸気が含まれており、炉内に微量の酸素が存在します。これが鋼の粒界(結晶粒の境界)を優先的に酸化させる「粒界酸化」の原因となり、疲労強度を低下させます。第二に、炉の入出口には引火防止のための火炎シール(フレームカーテン)が必要で、一酸化炭素中毒・火災のリスクがあります。24時間の有人監視が前提となるため、夜間無人化の障壁になります。第三に、CO2排出量が多く、脱炭素対応が求められる現在の製造環境では大きな制約となっています。

>> ガス浸炭炉の仕組みと変成ガス(RXガス)の役割

真空浸炭——粒界酸化ゼロと細孔対応の利点

50〜4000Paに減圧した炉内でメタン・プロパン等の炭化水素ガスを供給し、鋼表面と直接反応させる方法です。炉内に酸化性ガスを含まないため、粒界酸化が発生しません。

精密部品や高疲労強度が要求される部品(航空宇宙・自動車レース用途等)では真空浸炭の採用が増えています。ただし、設備導入コストが高く、炉サイズの制約から大型ワーク・大量処理には不向きな場合があります。

>> 真空浸炭のメリット・デメリット

ダイレクト浸炭——ガス浸炭と真空浸炭を融合した次世代技術

当社が開発・製造するダイレクト浸炭(Direct Carburizing Process)は、ガス浸炭炉の汎用性と真空浸炭の品質の両立を目指した技術です。3つの技術的特徴があります。

アセチレンガスの直接供給:変成炉が不要で、アセチレン(C₂H₂)を直接鋼表面に供給します。アセチレンは真空下で炭素と水素に直接分解するため、CO₂・COを生成しません。

ホットウォール型炉体構造:従来の真空炉(コールドウォール型)と異なり、ガス浸炭炉と同様のホットウォール型を採用。省エネルギー性と炉内温度の均一性を両立しています。

雰囲気撹拌装置:対流加熱・対流降温が可能で、浸炭・浸炭窒化・光輝焼入れ等の多様な処理に対応できます。

処理時間はガス浸炭の約1/2、浸炭ガス使用量はガス浸炭の1%以下です。停電時には窒素が自動封入されるため、夜間・休日の無人操業が可能になります。

>> ダイレクト浸炭とは?仕組みとメリットを詳しく解説

固体浸炭・液体浸炭——歴史的経緯と現在の位置づけ

固体浸炭は木炭を炭素源として用いる最も古い方法で、現在は品質のばらつきが大きいため工業生産ではほぼ使われていません。液体浸炭はシアン化ナトリウムを主成分とする塩浴を用いますが、毒性の問題から採用は大幅に減少しています。これらは熱処理技術の歴史を理解するうえでの参照点として押さえておくべき方法です。

浸炭焼入れの種類別比較——方式選定のポイント

【ポイント】 方式の選定では、品質・環境・コストの3軸を同時に評価することが重要です。

品質面の比較——粒界酸化・均一性・歪み

粒界酸化の有無は、疲労強度に直接影響します。ガス浸炭では避けがたいのに対し、真空浸炭・ダイレクト浸炭では発生しません。細孔・止まり穴への浸炭均一性も、ガス浸炭では限界があります。

品質軸ガス浸炭真空浸炭ダイレクト浸炭
粒界酸化発生ありなしなし
細孔内の均一性△(内部が薄くなる)◎(パルス供給)
歪み・変形少ない少ない
硬化層の制御性

環境・安全面の比較——CO₂排出・火災リスク・無人化対応

脱炭素・安全・省人化の3点はいずれも現代の製造ラインに共通する要求です。これらを同時に改善できる方式は、従来のガス浸炭では実現できません。

環境・安全軸ガス浸炭真空浸炭ダイレクト浸炭
CO₂排出多い少ないほぼゼロ
火炎シールの要否必要不要不要
夜間無人化困難可能可能
工場環境(煤・熱)煤あり・高温クリーンクリーン

当社の常圧スマート浸炭では、アセチレンと窒素のみを使用するため、CO₂排出量を1基あたり年間約56トン削減できます。また既存のガス浸炭炉へのモジュール追加(レトロフィット)で対応できるため、新規炉導入の約1/3のコストで脱炭素化を実現できます。

>> 熱処理炉の選び方——導入前に確認すべきポイント

>> 脱炭素診断——自社の熱処理工程のCO₂排出量を把握する方法

コスト・導入面の比較——初期投資・既存炉改造・処理時間

導入コストだけでなく、処理時間の短縮による生産効率向上も総コスト評価に含める必要があります。

コスト軸ガス浸炭真空浸炭ダイレクト浸炭
初期導入コスト低〜中中(改造対応可)
処理時間標準同等〜やや短いガス比約1/2
既存炉への改造改造元になる困難常圧スマート浸炭として対応可
ランニングコストガス代・人件費大電力・設備維持費ガス使用量1%以下

浸炭焼入れの課題——現場で起きていること

ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、多くの担当者が「品質は維持したい、でも脱炭素も求められる、夜間は無人にしたい」という三重の課題を抱えながら、最適な処理方法を探しています。当社に寄せられる相談の多くは、以下の3点のいずれかに集約されます。

粒界酸化による疲労強度の低下

ガス浸炭では炉内の酸素が避けられないため、浸炭層の最表面で結晶粒界が優先的に酸化します。この粒界酸化層(5〜25μm程度)は疲労き裂の起点となり、部品の疲労強度を10〜30%程度低下させるとされています。

対策として従来はショットピーニング(表面を打撃して圧縮残留応力を付与する処理)が用いられてきました。しかしこれは後工程の追加であり、コストと工数が増えます。根本的な解決策は、粒界酸化を発生させない真空浸炭・ダイレクト浸炭に切り替えることです。

>> 粒界酸化とは?発生メカニズムと品質への影響

細孔・止まり穴への浸炭ムラ

ノズルや複雑形状部品の細孔・止まり穴では、ガス浸炭のガス流がうまく到達できず、内部に進むほど浸炭層が薄くなるという問題が起きます。当社に「ガス浸炭でノズル内部の浸炭層が外部の1/3程度にしかならない」というご相談が来る背景はここにあります。

ダイレクト浸炭では、アセチレンガスをパルス状(断続的)に供給する「パルス浸炭」技術を採用しています。ガスが供給される瞬間に細孔内に浸透し、排気の瞬間に新鮮なガスが入れ替わるサイクルを繰り返すことで、細孔の奥深くまで外部と同等の浸炭層を形成できます。実際に産業機器用ノズル(Φ30×100mm)への適用事例でも、細孔内部と外部で均一な浸炭層が確認されています。

CO₂排出と夜間無人化の壁

エンドユーザーからCO₂削減の要求が強まる中で、「処理品質はそのままにプロセスだけ脱炭素化したい」という要望が急増しています。しかし既存のガス浸炭ラインを全て入れ替えるとなれば、投資額も時間も膨大です。

当社の常圧スマート浸炭はこの問題を「既存炉へのモジュール追加」で解決するアプローチです。新規炉導入の約1/3のコストで、CO₂排出量をほぼゼロにできます。また、火炎シールが不要になるため、夜間無人化も同時に実現できます。「脱炭素」と「省人化」はトレードオフではなく、同時に解決できる課題です。

>> 熱処理工場の脱炭素化——常圧スマート浸炭が選ばれる理由

日本テクノの浸炭技術が実現すること

【ポイント】 当社の技術は「品質・環境・安全」の三課題を、独自開発の2つの技術で同時に解決します。

常圧スマート浸炭——CO₂排出ほぼゼロ・既存炉へのレトロフィット

常圧スマート浸炭は、高圧ガス工業様と共同開発した技術で、キャリアガスに窒素(N₂)、浸炭ガスにアセチレン(C₂H₂)を使用します。変成炉を必要とせず、CO₂もCOも排出しないため、「グリーンな浸炭処理」として国内の主要メーカーから問い合わせが増えています。

最大の特徴は、既存のガス浸炭炉にモジュールを追加するだけで導入できる点です。炉本体を廃棄する必要がなく、新規炉導入に比べて約1/3のコストで脱炭素化を実現できます。ソミック石川様のボールスタッド(材質:SCM435、要求硬度:表面HV420〜600)でも、従来のガス浸炭と同等品質を維持したまま脱炭素化できることを試作段階で確認しています。

>> 常圧スマート浸炭とは?仕組みと導入事例

ダイレクト浸炭——細孔まで均一・処理時間1/2・粒界酸化ゼロ

ダイレクト浸炭では、アセチレンを真空下でパルス供給することにより、処理時間をガス浸炭比約1/2に短縮しながら、粒界酸化ゼロ・細孔内均一浸炭を実現しています。浸炭ガスの使用量はガス浸炭の1%以下で、コスト・環境両面でのメリットがあります。

また、浸炭層の浅浸炭処理(有効硬化層深さ0.05〜0.10mm)にも対応しており、精密部品の表面改質にも活用いただけます。真空浸炭・浸炭窒化・光輝焼入れなど複数の処理を1台の炉でカバーできるため、工程集約にも貢献します。

「火のない熱処理工場」が実現する完全無人化

当社の浸炭処理は火炎シールを一切使用しません。停電時には窒素が自動封入されるフェイルセーフ機構を備えているため、夜間・休日の無人操業が可能です。工場内に火を持ち込まないため、天井に煤がなく、作業環境の温度も大幅に下がります。「熱処理工場らしくない、清潔感のある工場」を実現することが、人材確保の面でも評価されています。

>> 熱処理加工センター——1個からのサンプル実証実験

日本テクノの浸炭処理の3つの特徴

当社が自社の強みとして自信を持って申し上げられる点を、3つに絞ってお伝えします。

1985年創業・累計400台超の納入実績

1985年の創業以来、自動車・建機・産業機器などの大手メーカーへ、国内外累計400〜500台以上の熱処理炉を納入してきました。処理条件の引き出しが多いことと、長期にわたるアフターフォロー体制が評価されています。

1個からの熱処理レシピ開発——大手R&Dから評価される理由

当社は炉を販売するだけでなく、社内に熱処理加工センターを保有しています(バッチ炉:幅600×奥行900×高さ600mm、最大400kg対応)。1個からのサンプル実証実験を行い、お客様専用の「熱処理レシピ」(処理温度・時間・ガス流量・CP値の組み合わせ)を開発・構築したうえで量産移行をご支援します。

「まずサンプルで試したい」というご要望に対して、他社では断られるような難材・複雑形状の案件でも対応できる点が、大手メーカーのR&D部門から高く評価されています。

>> 熱処理レシピとは?条件出しから量産移行までの流れ

難材(SUS304・SUS316)から一般鋼種まで対応する処理範囲

S15C・S20C・SCM415・SCM435等の一般的な肌焼き鋼はもちろん、通常のガス浸炭では対応困難とされてきたSUS304・SUS316・SCH22等のステンレス・耐熱鋳鋼への浸炭実績もあります。ただし、すべての材質・形状に対応できるわけではなく、事前の実証実験が前提です。まずはご相談ください。

>> ステンレス鋼(SUS)への浸炭処理——難材対応の実績と条件

浸炭焼入れの加工事例

当社が実際に対応した案件から、材質・寸法・課題・成果の概要をご紹介します。

SCM435 ボールスタッド——規格変えずにCO₂削減

ソミック石川様からのご相談で、エンドユーザーの品質規格(表面硬度HV420〜600・内部硬度HV500〜600)をそのままに、浸炭処理のCO₂排出量を削減したいというご要望でした。当社の設備で従来のガス浸炭(870℃×60分等)と同等品質を確認する試作・条件出しを行い、常圧スマート浸炭への移行の見通しを立てることができました。

SUS304 ターボチャージャー可変ノズルベーン機構——低歪みダイレクト浸炭

自動車ターボチャージャーのタービン側に組み込まれる可変ノズルベーン機構(SUS304・SUS316・SCH22等、Φ120×5mm)へのダイレクト浸炭事例です。耐摩耗性・熱間強度・低歪みが同時に要求される難件でしたが、従来のクロマイジング処理より低温で硬化層を得ることに成功し、製品精度が評価されて採用に至っています。

S10C クラッチ部品——非合金鋼で0.5mm硬化層・光輝焼戻しで後工程短縮

工作機械向けのクラッチ部品(S10C、Φ120×10mm)への浸炭事例です。合金元素を含まない炭素鋼で0.5mm程度の有効硬化層を実現するとともに、光輝焼戻しによりスケールや焼き色を一切発生させず、後工程(洗浄・仕上げ)の大幅な短縮に貢献しました。

Φ30×100mm ノズル細孔——パルス浸炭で内部まで均一硬化

産業機器メーカー様より「ガス浸炭ではノズル内部の浸炭層が外部に比べて薄くなってしまう」というご相談をいただいた案件です(炭素鋼、Φ30×100mm)。ダイレクト浸炭のパルス供給技術により、ノズル内部の細孔でも外部と同等の浸炭層を形成し、ノズルの長寿命化を実現しました。

>> 熱処理加工の事例一覧

浸炭焼入れのことなら、日本テクノにお任せください

株式会社日本テクノは、1985年の創業以来、熱処理炉の設計・製作から受託加工まで一貫して手がけてきました。「火がない・CO₂が出ない・人がいない」というコンセプトのもと、脱炭素・無人化・品質安定を同時に実現する浸炭技術を、炉メーカーと加工事業者の両方の視点からご提供します。

「現在のガス浸炭炉を脱炭素化したい」「細孔内部の浸炭ムラを解消したい」「難材(ステンレス等)への浸炭を試みたい」など、どのようなご相談でもお気軽にお問い合わせください。まずは1個からのサンプル実証実験で、貴社専用の熱処理レシピを一緒に作り上げます。

▶ お問い合わせ・ご相談はこちら(nihon-techno.co.jp)

▶ 熱処理技術ナビ(heat-treatment-navi.com)

よくある質問

Q. 浸炭焼入れと窒化処理はどう違いますか?

A. 浸炭は炭素を鋼表面に浸透させ、焼入れによって硬化する処理です。窒化は窒素を浸透させる処理で、処理温度が低く(500〜580℃)、焼入れが不要なため変形が少ない点が特徴です。精密部品や薄肉部品では窒化が適している場合があります。

Q. ステンレス鋼(SUS304)に浸炭焼入れはできますか?

A. 通常のガス浸炭では対応が困難ですが、当社のダイレクト浸炭技術ではSUS304・SUS316への浸炭実績があります。すべての仕様に対応できるわけではないため、まずはサンプルをご相談ください。

Q. 既存のガス浸炭炉をそのまま脱炭素化できますか?

A. 可能です。当社の常圧スマート浸炭は、既存炉へのモジュール追加(レトロフィット)で対応でき、新規炉導入の約1/3のコストで脱炭素化を実現できます。詳しくはお問い合わせください。

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