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熱処理の基礎知識・技術コラム

GD-OESとは?表面分析で熱処理の不具合原因を究明する方法を解説!

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2026/10/11

GD-OESで熱処理の不具合原因を究明 コラムバナー

浸炭や窒化をかけた部品で、表面の硬さが出ない、早期にはく離した、処理後に変色したといった不具合が起きたとき、まず悩むのは「原因が熱処理の条件なのか、材料なのか、前処理なのか」という切り分けです。外部の分析機関に依頼すると結果が出るまで時間がかかり、その間に対策が止まってしまうことも少なくありません。

本記事では、表面から深さ方向の元素の分布を短時間で測定できる分析法「GD-OES」について、原理とほかの表面分析との違いを整理します。そのうえで、浸炭・窒化・表面の不具合のそれぞれでGD-OESから何が読み取れるのか、原因究明をどう進めるのかを解説します。最後に、熱処理の受託加工と熱処理炉の設計・製作を手がける日本テクノが、GD-OESを使ってどのように不具合の原因究明を支援できるかをご紹介します。

GD-OES(グロー放電発光分析)とは?

GD-OES(グロー放電発光分光分析)とは、アルゴンのプラズマで試料の表面を少しずつ削りながら、飛び出した原子が放つ光を測定し、表面から深さ方向の元素の分布を調べる分析法です。 英語の Glow Discharge Optical Emission Spectrometry の略で、「GDS」と呼ばれることもあります。

めっきや皮膜、表面改質層の評価に広く使われている手法で、熱処理の分野では、浸炭や窒化によって表層に入った炭素・窒素の分布を確認する用途があります。大学や公設試験研究機関では一般的な装置ですが、部品メーカーの現場では、まだ名前を聞いたことがない方も多いかもしれません。

GD-OESの原理|スパッタリングと発光で元素を分析する

GD-OESの原理は、「削る」と「光らせる」を同時に行うことにあります。

低圧のアルゴンガス中で試料と電極の間に電圧をかけると、グロー放電と呼ばれる安定した放電が起こります。放電で生じたアルゴンイオンが試料の表面にぶつかると、表面の原子が少しずつはじき出されます。これをスパッタリングといいます。はじき出された原子はプラズマの中で励起され、元素ごとに決まった波長の光を出します。この光の波長で元素を見分け、光の強さから濃度を求めるのがGD-OESの仕組みです。

スパッタリングは表面から一定の速さで進むため、時間の経過がそのまま「表面からの深さ」に対応します。装置メーカーの解説では、スパッタの速さは毎秒約10nmと高速です。また、高周波(RF)方式の装置であれば、金属だけでなく酸化膜や塗膜のような電気を通しにくい試料も測定できます。

GD-OESでわかること|表面から深さ方向への濃度プロファイル

GD-OESでわかるのは、「表面から深さ方向に、どの元素がどれだけあるか」という分布です。結果は、横軸に表面からの深さ、縦軸に元素の濃度(または発光強度)をとったグラフで示され、これを濃度プロファイル(デプスプロファイル)と呼びます。

GD-OESの主な特徴は次のとおりです。

項目GD-OESの一般的な特徴
測定できる元素水素(H)からウラン(U)まで。炭素・窒素・酸素・水素などの軽元素も含めて、数十元素を同時に測定できる
測定できる深さナノメートルの薄膜から約100μm程度まで(材質・条件により約200μmまでの例もある)
深さ方向の分解能数nmオーダー
分析する範囲直径4mm程度の面(装置により1〜10mm程度)
試料平らな面をもつ試料。導電性のない皮膜も測定可能

つまり、GD-OESは「ある一点」ではなく、直径数mmの「面」を少しずつ掘り下げながら、表層の元素の変化を連続的に記録する分析法です。

GD-OESが熱処理品の表面分析に向いている理由

GD-OESが熱処理品の表面分析に向いているのは、熱処理の結果を左右する元素と深さの範囲が、GD-OESの得意分野とよく重なっているからです。理由は3つあります。

  • 熱処理の主役である軽元素を測れる:浸炭の炭素(C)、窒化の窒素(N)、酸化や脱炭にかかわる酸素(O)、水素脆化にかかわる水素(H)は、いずれも分析法によっては測りにくい軽元素です。GD-OESはこれらを同時に測定できます。
  • 表層の不具合が起きる深さを短時間で見られる:脱炭、粒界酸化、窒化の化合物層、変色の原因となる酸化膜など、熱処理の不具合の多くは表面から数十μm以内で起こります。GD-OESは、この範囲の分布を断面の切り出しや樹脂への埋め込み、研磨といった前処理なしで測定できます。
  • 良品との比較がしやすい:同じ条件で測った濃度プロファイルを重ねれば、良品と不具合品で「どの深さから、どの元素が違うのか」が一目でわかります。

実際に、公設試験研究機関でもGD-OESは浸炭・窒化などの表面改質層の分析に使われており、よく分析される分野として金属材料、窒化処理、浸炭処理、表面の変色が挙げられています。

GD-OESとほかの表面分析手法の違い

GD-OESは、ほかの表面分析手法と比べて「深さ方向の分布を、広い面積で、短時間に」測ることを得意としています。 一方で、局所の分析や化学結合状態の分析は、別の手法のほうが向いています。目的に合わせて使い分けることが大切です。

GD-OES・XPS・SIMS・EPMAの比較

装置メーカーの比較をもとに、主な表面分析手法の違いを整理すると次のようになります。

表:GD-OESとほかの表面分析手法の比較

比較項目GD-OESXPSSIMSEPMA
分析できる深さ〜100μm〜数10μm〜数10μm〜300μm
深さ方向の分解能数nm〜数nm〜数10nm〜1μm〜
測定時間極めて短い長い長い前処理を含め長い
感度数100ppm数%ppm数%
真空低真空で容易超高真空が必要超高真空が必要高真空が必要
測定領域Φ1〜10mm〜□0.3mm〜□0.3mm〜□0.3mm

熱処理の不具合調査に置き換えると、使い分けの目安は次のようになります。

  • GD-OES:表層の炭素・窒素・酸素の分布を、面の平均として短時間で確認したいとき
  • EPMA:断面を切り出して、特定の場所(歯元、角部など)の元素の分布をマップで見たいとき
  • XPS:最表面数nmの酸化状態や化学結合の状態まで知りたいとき
  • SIMS:ごく微量の元素の分布を高感度で調べたいとき

まずGD-OESで「どの深さで何が起きているか」の当たりをつけ、必要に応じてEPMAなどの局所分析に進むと、調査の手戻りを減らせます。

GD-OESの注意点|試料の形状と分析できる深さ

GD-OESは万能ではありません。熱処理品の分析で特に押さえておきたい注意点は3つです。

1つ目は試料の形状です。GD-OESは平らな面に電極を押し当てて測定するため、原則として平滑な試料が必要です。分析機関によって条件は異なりますが、「最小14mmφ程度の平滑試料で、凹面は測定不可」(大阪産業技術研究所)、「通常は平板で最小10mm角」(日鉄テクノロジー)といった目安が示されています。小さな部品や曲面は、治具の工夫や試験片の同時処理で対応することになります。

2つ目は分析できる深さです。GD-OESで測れるのは表面から約100μm程度までです。浸炭焼入れの有効硬化層深さはmm単位で指定されることも多く、硬化層の全体をGD-OESだけで評価することはできません。深い部分の評価は、断面の硬さ試験や組織観察で補います。

3つ目は、GD-OESでわかるのは元素の分布であり、組織ではないことです。たとえば、焼入れ後の残留オーステナイトやマルテンサイトの状態、結晶粒の大きさはGD-OESでは判断できません。これらは金属組織観察やX線回折などで確認します。

ただし、こうした制約は「GD-OESを使えない」という意味ではありません。表層の元素の異常をGD-OESで素早く見つけ、深さや組織の評価をほかの手法で補う、という組み合わせ方が、熱処理の不具合調査では最も効率的です。

GD-OESで原因を究明できる熱処理の不具合

熱処理の不具合の多くは、表層の炭素・窒素・酸素などの「量」と「分布」の乱れとして現れるため、GD-OESで原因の手がかりをつかめます。 硬さが出ない、早く壊れる、色が変わったといった症状は同じでも、その裏で起きていることは部品ごとに違います。ここでは、浸炭、窒化、表面の不具合に分けて、GD-OESの濃度プロファイルから何が読み取れるかを解説します。

なお、ここで紹介するのは一般的な不具合のパターンと、その確かめ方の考え方です。実際の原因は、材質、形状、処理条件、使われ方によって変わるため、GD-OESの結果だけで断定せず、硬さ試験や組織観察とあわせて判断します。

浸炭の不具合(硬さ不足・脱炭・粒界酸化)と炭素の濃度プロファイル

浸炭の不具合を調べるとき、GD-OESでまず見るのは表層の炭素の濃度プロファイルです。浸炭は表面から炭素を染み込ませる処理なので、「表面の炭素濃度が狙いどおりか」「表面から内部へなだらかに下がっているか」が品質の基本になります。

浸炭品で起こりやすい不具合と、濃度プロファイルの見え方を順に見ていきます。

表面の硬さが出ない:浸炭不足と脱炭

浸炭品の表面硬さが規格に届かないとき、まず疑うのは表面の炭素が足りていないことです。原因は大きく2つに分かれます。

  • 浸炭不足:炉内の雰囲気の炭素濃度(カーボンポテンシャル)が低かった、処理時間が足りなかったなど、そもそも炭素が十分に入っていないケースです。濃度プロファイルは、全体的に炭素の水準が低く、浅いところで母材の値まで下がる形になります。
  • 脱炭:いったん入った炭素が、加熱中や冷却中に表面から抜けてしまうケースです。加熱雰囲気中の酸素や水分などの酸化性ガスが原因となり、加熱温度が高いほど、時間が長いほど進みます。脱炭した層はその後の焼入れで硬化しません。注意したいのは、水分を含む雰囲気などでは表面が光沢を保ったまま脱炭だけが進むことがある点です。見た目では気づけないため、元素の分布で確かめる意味があります。

脱炭が起きている場合、濃度プロファイルでは最表面だけ炭素が落ち込み、少し内側でいったん高くなってから下がる形が典型です。浸炭不足なのか脱炭なのかで、見直すべき工程(浸炭中の雰囲気か、焼入れ前後の加熱や冷却か)が変わるため、この形の違いは原因究明の大きな手がかりになります。

疲労強度が低い・早期にはく離する:粒界酸化(浸炭異常層)

浸炭品が想定より早く疲労破壊したり、表面がはく離したりする場合、粒界酸化が関係していることがあります。

ガス浸炭では、浸炭雰囲気中に酸素が存在するため、処理品の最表層で結晶粒界に沿って酸化物ができます。この酸化物にはケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)などの合金元素が取り込まれ、その周辺の焼入れ性が下がります。その結果、表層から数十μmの範囲に十分に焼きが入らない層(不完全焼入れ層)ができ、強度低下の要因になります。

粒界酸化が疑われるとき、GD-OESでは炭素に加えて酸素と合金元素(Si・Cr・Mn)の表層の分布を確認します。表層で酸素が高く、合金元素の分布が乱れていれば、粒界酸化の可能性を考えて断面の組織観察に進みます。数十μmという深さは、GD-OESが得意とする範囲そのものです。

なお、同じ資料では、真空浸炭ではガス浸炭で生じる粒界酸化が生成しないことも示されています。粒界酸化が原因と判断できれば、雰囲気の管理の見直しに加えて、処理方法そのものの変更も対策の選択肢になります。

>>真空浸炭焼入れとは?ガス浸炭との違い・メリットまで解説

表層がかえって軟らかい:過剰浸炭

炭素は多ければよいわけではありません。表面の炭素濃度が高くなりすぎると、焼入れ後に残留オーステナイトが増え、硬いマルテンサイトの割合が下がって、表層が軟らかくなることがあります。過剰な浸炭によって表層が軟化したと推察された評価事例も報告されています。

この場合、GD-OESの濃度プロファイルでは表面付近の炭素が狙いより高いことがわかります。ただし、残留オーステナイトそのものはGD-OESでは測れないため、組織観察やX線回折で確認します。「表面硬さ不足」という同じ症状でも、炭素が足りないのか多すぎるのかで対策は正反対になるため、GD-OESで炭素の水準を確かめておくことが重要です。

窒化の不具合(窒化されない・硬化不足・化合物層の異常)と窒素の濃度プロファイル

窒化の不具合を調べるとき、GD-OESで中心に見るのは表層の窒素の濃度プロファイルです。窒化は鋼の表面から窒素を染み込ませて硬くする処理で、処理温度が低く変形が小さい反面、表面の状態に結果が左右されやすいという特徴があります。

>>ガス軟窒化とは?処理の原理・特徴・選定ポイントを徹底解説

窒化されない・ムラになる:表面の皮膜や汚れ

窒化した部品の一部だけ硬さが出ない、ムラになるといった不具合では、窒素の入り口である表面に、窒素の侵入を妨げるものがあった可能性を考えます。

代表的なのはステンレス鋼です。ステンレス鋼の表面には窒素の侵入を阻害する不動態皮膜があるため、ガス窒化での窒化は難しいとされ、皮膜を取り除く前処理が検討されてきました。ステンレス鋼以外でも、前加工で残った酸化皮膜、切削油や防錆油の残り、洗浄の不足などは、窒化ムラの原因として疑われる典型的な要素です。

このとき、GD-OESでは最表面の酸素や、本来は母材にない元素の有無と、その下で窒素がどこから立ち上がっているかをあわせて見ます。窒化できた部分とできなかった部分を比べ、最表面に酸素や異物由来の元素が残り、その下で窒素がほとんど入っていなければ、前処理や表面の状態に原因がある可能性が高くなります。

硬さが足りない・層が浅い:窒素の量と侵入深さ

窒化品全体の硬さが足りない、硬化層が浅いといった場合は、窒素の表面濃度と、どの深さまで入っているかを確認します。処理温度、時間、炉内の雰囲気(窒化の強さ)の管理がずれると、窒素の量や侵入深さが狙いから外れます。

良品と不具合品の窒素の濃度プロファイルを重ねると、「表面の窒素が少ない」のか「表面は同じだが深くまで入っていない」のかを区別できます。前者なら雰囲気、後者なら温度や時間の条件というように、見直すべき項目が絞り込めます。

化合物層の異常

窒化では、最表面に硬い化合物層、その下に窒素が拡散した拡散層ができます。化合物層が厚すぎるともろくなり、薄すぎると耐摩耗性や耐食性が不足することがあります。GD-OESでは、窒素の濃度が高い最表面の範囲から化合物層のおおよその厚さを推定でき、良品との比較に使えます。ただし、化合物層の中の結晶の種類や、ポーラス(すき間)の状態までは判断できないため、断面の組織観察やX線回折で確認します。

浸炭窒化品の層の見分け方

浸炭と窒化を組み合わせた処理品では、炭素と窒素の両方の濃度プロファイルを取ることで、窒素が多い最表層と、その下の炭素が多い層を見分けられます。詳しくはよくある質問で解説しています。

>>浸炭窒化処理における浸炭層と窒化層の識別方法や深さ測定方法を教えてください

変色・錆・密着不良など表面の不具合と酸素・不純物

硬さには問題がないのに、熱処理後に変色した、錆びやすい、めっきや塗装がはがれるといった表面の不具合もあります。これらは最表面のごく薄い範囲で起きていることが多く、GD-OESの深さ分解能が生きる領域です。

  • 変色:熱処理後の変色は、表面にできた薄い酸化膜による光の干渉が原因であることがあります。ステンレスの熱処理後の変色をGD-OESで調べ、酸素と鉄の分布から鉄の酸化膜の形成を確認した事例も公開されています。酸素がどの深さまで高いかを見ることで、酸化膜のおおよその厚さもわかります。
  • 錆びやすい:防錆のための酸化皮膜処理をした部品が錆びやすい場合は、皮膜が狙いどおりの厚さでできているかを、酸素の濃度プロファイルで確かめられます。良品と比べて酸素の高い範囲が薄ければ、皮膜の形成不足が疑われます。
  • めっき・塗装の密着不良:熱処理後にめっきや塗装をする部品では、界面に残った酸化物や汚れが密着不良の原因になることがあります。GD-OESは、めっき・表面処理における表面の酸化や界面の拡散、変色の要因の評価に使われています。
  • 水素脆化の疑い:GD-OESは水素も測定できるため、めっきや熱処理を行った部品のベーキング前後の水素量の評価にも使われています。遅れ破壊のような不具合で、水素の関与を確かめる手がかりになります。

>>オキシコートとは?耐食性・硬度を同時に高める複合処理の仕組みと選定ポイント

熱処理の不具合症状とGD-OESで確認する元素の対応表

ここまでの内容を、症状から引けるように整理します。

表:熱処理の不具合症状とGD-OESで確認する元素の対応表

不具合の症状疑われる主な原因GD-OESで確認する元素と見方あわせて行う評価
浸炭品の表面硬さが出ない浸炭不足/脱炭C:全体に低いか、最表面だけ落ち込んでいるか硬さ試験、組織観察
浸炭品の表層がかえって軟らかい過剰浸炭(残留オーステナイトの増加)C:表面付近が狙いより高いか組織観察、X線回折
浸炭品の疲労強度が低い・早期にはく離する粒界酸化(浸炭異常層)O・Si・Cr・Mn:表層数十μmで酸素が高く、合金元素の分布が乱れていないか断面の組織観察
窒化されない・ムラになる不動態皮膜、酸化皮膜、油・洗浄残りO・不純物:最表面に残っていないか/N:その下で立ち上がっているか外観観察、前処理工程の確認
窒化品の硬さが足りない・層が浅い温度・時間・雰囲気の管理のずれN:表面濃度と侵入深さを良品と比較硬さ試験(断面)
窒化品がもろい・摩耗が早い化合物層の厚さの異常N:濃度が高い最表面の範囲の厚さ組織観察、X線回折
熱処理後に変色した酸化膜の形成O・Fe(・Cr):最表面の酸素の高い範囲外観観察
錆びやすい防錆皮膜の形成不足O:皮膜に相当する範囲の厚さ塩水噴霧試験など
めっき・塗装がはがれる界面の酸化物・汚れO・C・不純物:界面付近の分布断面観察
遅れ破壊・水素脆化が疑われる処理中・後工程での水素の侵入H:表層の水素の分布破面観察

この表は一般的な目安です。実際の調査では、良品と不具合品を同じ条件で測定し、濃度プロファイルの差がどの深さで、どの元素に出ているかを起点に、原因の候補を絞り込んでいきます。

GD-OESを使った熱処理の不具合原因究明の進め方

GD-OESを使った不具合の原因究明は、「良品と比べられる準備」「濃度プロファイルの比較」「硬さ・組織との突き合わせ」「対策の決定」の4段階で進めます。 分析だけを単独で行うのではなく、前後の工程とつなげることで、結果を対策に生かせます。

不具合品と良品を比較できる形で表面分析の準備をする

表面分析の準備でいちばん大切なのは、不具合品と比べるための良品(または正常だったロットの品)を用意することです。GD-OESの濃度プロファイルは、単独で見るよりも、良品と重ねたときに差がはっきりします。

あわせて、次の情報をそろえておくと、分析結果の読み解きが早くなります。部品の使用条件や不具合の発生状況、仕様(材質・硬さ・熱処理・表面処理)の確認は、破損品の原因調査で最初に行う事前調査としても挙げられています。

  • 材質(鋼種、ミルシートがあればその成分)
  • 熱処理の内容(処理名、指定の硬さ・硬化層深さ、処理した会社や時期)
  • 不具合の内容(どの部位に、いつ、どのような症状が出たか)
  • 前後の工程(前加工、洗浄、後工程のめっき・塗装など)

測定したい面は、素手で触れたり、自己判断で磨いたりしないようにします。表面の汚れや皮膜そのものが原因の手がかりになることがあるためです。

GD-OESで濃度プロファイルを測定し、違いを比較する

準備ができたら、GD-OESで不具合品と良品の濃度プロファイルを同じ条件で測定し、重ねて比較します。

見るポイントは、「どの元素が」「どの深さで」「どう違うか」の3つです。たとえば、最表面の数μmだけ酸素が違うなら表面の皮膜や汚れ、数十μmにわたって炭素や窒素の水準が違うなら処理条件というように、違いが出る深さによって疑うべき工程が変わります。

GD-OESは短時間で測定できるため、1点だけでなく、不具合が出た部位と出ていない部位、複数のロットなどを比べられるのも利点です。

硬さ試験・組織観察と組み合わせて原因を絞り込む

GD-OESの結果で原因の候補が見えたら、硬さ試験と金属組織観察で裏付けをとります。 GD-OESは元素の分布、硬さ試験は機械的な性質、組織観察は焼入れの状態や粒界の様子を示すもので、それぞれ見ているものが違います。

  • 硬さ試験:断面の硬さの分布から、有効硬化層深さや表面硬さを数値で確認します。GD-OESでは届かない深い範囲の評価にも使います。
  • 組織観察:脱炭層、粒界酸化、残留オーステナイト、化合物層の状態などを直接確認します。

「GD-OESで最表面の炭素が落ち込んでいる」「断面の組織に脱炭層が見える」「表面付近の硬さが低い」という3つがそろえば、脱炭が原因である可能性は高いと判断できます。このように、複数の評価を突き合わせることで、原因の確からしさが上がります。

原因に応じて熱処理条件・前処理・材料の対策を決める

原因が絞り込めたら、対策を決めます。熱処理の不具合の対策は、大きく次の4つに分かれます。

  • 熱処理条件の見直し:カーボンポテンシャルや窒化の雰囲気、温度、時間、冷却の条件を調整します。
  • 前処理の見直し:洗浄の方法、前加工で生じた皮膜の除去などを見直します。
  • 材料の見直し:鋼種や合金元素の量を変えます。
  • 処理方法の変更:たとえば粒界酸化が問題なら、ガス浸炭から真空浸炭への変更を検討します。

対策の効果は、同じGD-OESの濃度プロファイルで確かめられます。対策前後で比較できるため、「直ったかどうか」を元素の分布という客観的なデータで示せるのもGD-OESの利点です。

>>表面改質とは?目的・材質・課題から最適な手法を選定するためのガイド!

日本テクノがGD-OESで熱処理の不具合原因究明を支援できる理由

株式会社日本テクノ(埼玉県蓮田市)は、自社でGD-OESを保有し、熱処理の受託加工と熱処理炉の設計・製作の両方の知見で分析結果を読み解けるため、熱処理の不具合の原因究明から対策までを一貫して支援できます。 当社がお手伝いできる理由を4つご紹介します。

自社保有のGD-OESで表面分析を短期間で実施

当社は、GD-OESの装置を自社で保有しています。外部の分析機関に表面分析を依頼すると、結果が出るまでに1〜2週間かかることがありますが、当社では内容によって1日〜数時間で分析を行えます。[要確認:数値の掲載可否]

不具合が出ているとき、原因の当たりがつくまでの時間は、そのまま対策の遅れにつながります。分析の待ち時間を短くできることは、クレーム対応や再発防止を急ぐ場面で大きな意味を持ちます。

なお、分析の内容や試料の状態、ご依頼の状況によって、対応の可否や納期は変わります。まずは状況をお聞かせください。

熱処理の受託加工と熱処理炉メーカーの知見で分析結果を読み解く

濃度プロファイルは、測っただけでは原因になりません。「このプロファイルの形は、炉の中で何が起きたときに現れるのか」を読み解いて、初めて対策につながります。

当社は、浸炭、窒化、真空熱処理などの熱処理の受託加工を行うと同時に、熱処理炉の設計・製作、改造、メンテナンスも手がけています。処理条件の設定だけでなく、炉内の雰囲気やガスの流れ、設備の状態までを想定できるため、分析結果を「処理条件の問題なのか」「設備の問題なのか」「前処理や材料の問題なのか」という観点で読み解けます。

また、当社の設備には、ビッカース、マイクロビッカース、ロックウェルの各硬さ試験機や金属顕微鏡、試料の切断・埋込・研磨の機器もそろっています。GD-OESの結果を、硬さ試験や組織観察と組み合わせて評価できます。

>>日本テクノの設備一覧

他社で熱処理した部品の不具合原因究明にも対応

GD-OESによる分析は、当社で熱処理した部品に限りません。他社で熱処理した部品の不具合の原因究明についても、ご相談いただけます。

「今の処理先に原因を聞いても、はっきりしない」「第三者の目で表層の状態を確かめたい」といった場合も、まずはお問い合わせください。

原因究明から熱処理条件の見直し・試作まで一貫して相談できる

原因がわかったあとに必要なのは、対策です。当社は熱処理レシピの開発支援を行っており、少量の試作から承っています。試作には量産向けの炉を使うため、量産への移行をスムーズに確認できます。熱処理や表面改質の新技術を共同で開発する体制も整えています。

原因が設備側にある場合は、熱処理炉の改造やメンテナンスのご相談にも対応できます。分析、条件の見直し、試作、設備の対策までを1社で相談できることが、当社にご依頼いただく大きな利点です。

>>熱処理・表面改質 コンサルティング

GD-OESに関するよくある質問

GD-OESとGDSは同じ分析ですか?

はい、同じ分析法です。GD-OESはグロー放電発光分光分析の略で、分野や装置メーカーによってGDSとも呼ばれます。

GD-OESで浸炭層と窒化層を見分けられますか?

はい。炭素と窒素の濃度プロファイルを同時に取ることで、窒素が多い最表層と、その下の炭素が多い層を見分けられます。詳しくはこちらのFAQをご覧ください。

他社で熱処理した部品もGD-OESで分析を依頼できますか?

はい、ご相談いただけます。他社で熱処理した部品の不具合の原因究明にも対応しています。内容により対応可否や納期が変わるため、まずはお問い合わせください。

GD-OESによる表面分析・熱処理の不具合原因究明は日本テクノへご相談ください

熱処理品の硬さ不足、はく離、窒化ムラ、変色などの不具合で、原因の切り分けにお困りではありませんか。GD-OESで表層の炭素・窒素・酸素の分布を確かめれば、原因の当たりを早くつけられます。

日本テクノでは、自社保有のGD-OESによる表面分析と、熱処理の受託加工・熱処理炉メーカーとしての知見を組み合わせて、不具合の原因究明から熱処理条件の見直し、試作、設備の対策までをご支援します。当社で処理していない部品についてもご相談いただけます。

お問い合わせの際は、材質、熱処理の内容、不具合の症状、良品の有無をお知らせいただくと、スムーズにご案内できます。お問い合わせフォームでは「お問い合わせ項目」で「その他」を選び、内容欄に「GD-OES分析・不具合の相談」とご記入ください。

参考資料

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