浸炭窒化処理のメリット・デメリット
- 浸炭処理
- 窒化処理
2023/10/31
金属表面の改質を行う熱処理技術としてよく比較されるのが、浸炭と窒化。実は、両者の良いとこ取りをした浸炭窒化処理というものがあります。
そこで今回は、熱処理技術のプロフェッショナルが、浸炭窒化処理をテーマに、通常の浸炭(ガス浸炭)との違いも踏まえて解説いたします。
浸炭窒化処理とは?
浸炭窒化処理(英語:Carbonitriding、浸炭浸窒処理とも)は、通常のガス浸炭(900℃以上)よりも低い850℃前後の温度で鋼の表面に炭素と窒素を同時浸入させ、その後焼入れして硬化させる熱処理です。 通常のガス浸炭雰囲気に数%のNH₃ガスを添加し、NH₃から分解したN成分により、窒化と浸炭が同時に行われます。
浸炭窒化処理のメリット
浸炭窒化処理とガス浸炭をよく聞かれるのですが、両者の違いは、文字通り窒化処理の有無です。
窒化処理が入ることで焼入れ性が向上し、ガス浸炭では適用できないSPCCや低炭素鋼等の非合金鋼の浸炭が可能になるため、材料コストを低減することができます。さらに、ガス浸炭よりも低い温度で焼入れできることから、熱処理による変形や歪みも抑えることができます。
この、非合金鋼の浸炭が可能になるというのと、熱処理による変形・歪みを抑制できる点が浸炭窒化処理のメリットです。
浸炭窒化処理のデメリット
浸炭窒化処理には、メリットもあれば、デメリットもあります。
表面の硬度向上による耐摩耗性強化を目的として浸炭窒化処理を行うケースが多いため、ガス浸炭に比べて硬化層が浅く、靭性が低いため、耐衝撃性は低下してしまいます。
したがって、製品の用途を充分考慮したうえで、浸炭窒化処理を施すのか充分検討する必要があります。
「熱処理技術ナビ」の浸炭窒化処理技術
「熱処理技術ナビ」は、浸炭、窒化、浸炭窒化処理をはじめとする熱処理受託の実績が多数ございます。
その根底にあるのが、国内外への400台以上の熱処理炉納入実績とCO2ガスを全く排出しない次世代の熱処理炉・熱処理技術の開発、そして自動車・建機・産業機械等各業界に対する豊富なノウハウです。
浸炭窒化処理の事例
「熱処理技術ナビ」による浸炭窒化処理の事例をご紹介します。
スクロールコンプレッサーへの浸窒焼入れ
こちらは、自動車エンジン向け量産部品への浸窒焼入れ事例です。
従来、耐磨耗性・高強度が必要な部品は浸炭焼入れや窒化が用いられてきました。しかし、前者は歪み、後者は靭性で劣り、欠け発生等の懸念が残ったため、熱処理後の加工レスと高強度高靭性を両立できる浸窒焼入れが着目され、バルブリフト可変機構に採用されるケースが増えています。
「熱処理技術ナビ」のN-ハード(H)は、高温のNH₃雰囲気中で窒素を浸入拡散後、急冷する処理です。浸窒焼入れは表層のみ変態・硬化させる処理であるため、変態領域が非常に小さく、低歪みとすることが可能です。この低歪みの特徴を活かし、エンジン部品以外にも、寸法精度が要求されるスクロールコンプレッサー(カーエアコン)内で使用される偏芯ブッシュなどにも浸窒焼入れが採用されております。
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